2025/06/13 20:48

“Kembar Inn”でチェックインを済ませて、バギョー探しはひとまず後回し。

いざ、ヴィレスティンガルビーチへ!


舗装もされていない、もはや獣道。

牛がのっしのっし歩いていて、ところどころにフン。

それを避けながら、息を切らして丘を登る。

眼下には、小さな港町・パダンバイが広がっていた。



その景色は、24年前とほとんど変わっていない。

変わらないって、こんなに心に響くんやなあ。

さらに進むと、目に飛び込んできたのは、

真っ赤な文字で「WHITE SAND BEACH」と書かれた看板。

バリ東部の多くが黒砂のビーチな中、

この白砂の浜は地元の誇りなんやろな、とふと思い出す。

……で、その先にまた「WHITE SAND BEACH」。

もう少し歩いたら、また「WHITE SAND BEACH」。

どんだけ好きやねん、WHITE SAND BEACH。

ていうか、どれが本物なん。

あとから思えば、

あれ全部、それぞれのワルンが出してる“誘導看板”やったんやな。

なるほど、そういうシステム。

いちばん手前の看板を信じて、坂を下ることにした。



目の前に広がったのは、青い海と白い砂浜。

ここや、ここやん……!

思わず立ち尽くす。

ほんまに、あの頃と変わらん景色。

いや、ひとつ違ってた。

何もなかったあの頃と違い、

いまは海の家みたいなワルンがいくつも並び、

砂浜には段差の土手。

パラソルとチェアがずらりと並び、レンタル制になっていた。

商魂すさまじいな。

1時間5万ルピア。

ちなみに2時間ほどいても、追加料金は取られなかった。やさし。

 

お昼ごはんは、パラソルを借りたワルンでナシチャンプル。



波の音と海風をBGMに、スプーンが止まらん。

「美味しい」ってこういうことやな、ってしみじみ思う。

満腹になったところで、海でひと泳ぎしてホテルへ

部屋の空気も、24年前のまま。



シーツの柄すら当時のままなんちゃうか?と思うくらい。

シャワーをひねると……水だけ。

えっ、Googleマップには「お湯あり」って書いてたやん!?

しかも海の近くやからか、下水のにおいが少し気になる。

でも芳香剤の香りは意外と好き。甘くてコーヒーっぽい不思議な匂い。

 

さて、そろそろ本題。

バギョーに会いに行かねば。

ホテルの人に尋ねると、

「バギョーはお寺にお祈りに行ってるらしい」とのこと。

お寺の方へ歩いてみるも、

どこも参拝者でいっぱい。バギョーを探すのは至難の業や。

 

そのとき、ふとよみがえる記憶。

──そういや、バギョーの家、行ったことあるわ。

おぼろげな記憶を頼りに小道へ入る。

「このへんやったと思うんやけどな……」

あたりを見回していると、通りすがりの男性が声をかけてきた。

「バギョー?ああ、コーマン・バギョーやな?そこやで」

と、さらっと家を指さす。

やっぱりこの辺やったか。

 

教えてもらった家の前へ。

インターホンなんて洒落たものはないので、

玄関先から大声で呼ぶ。

「ハロー!? バギョー!!」

しばらくして、奥から出てきたのは見知らぬ女性。

……誰や?という目つき。

「ここ、バギョーの家ですか?」

「そうだけど、あなたは?」

とりあえず事情を説明して、なんとか家の中へ通してもらう。

すると──

出てきたのは、バギョーのパパ!

ずいぶんおじいちゃんになっていたけど、

昔のような風格と優しさはそのまま。

私のことを覚えてくれていたのかどうかはわからんけど、

「ご飯食え」「お菓子食え」と世話を焼いてくれる。

その間、さっきの女性が誰かに電話してくれていて、

「バギョーがもうすぐ帰ってくる」とのこと。

 

──そして、ついに!

「バギョーやん!おお、バギョー!!」

……のはずが。

返ってきたのは、

「誰?」

みたいな表情。

 

まじかよ!!

 

果たしてバギョーは本当に彼なのか――?